下弦の壱 魘夢(えんむ)

 

漫画・アニメ「鬼滅の刃」の登場人物。

 

概要

吾峠呼世晴による漫画『鬼滅の刃』の登場人物。

 

鬼舞辻無惨配下の精鋭、十二鬼月の一人。
「眠り鬼」。
下弦の壱」の数字を与えられた洋装の青年の姿の鬼。
席位に従い左目には「下壱」の文字が刻まれている。

 

作中では、お気に入りである「下弦の伍」が倒された事に怒る無惨によって招集された下弦の鬼たちの1人として登場。
他の下弦の鬼達が不甲斐なさを叱責された挙句、不容易な態度が無惨の逆鱗に触れて粛清されていく中、最期に言い残す事はないかと問われた彼の口から出たのは、「私は夢見心地で御座います。貴方様直々に手を下して戴けること」「他の鬼たちの断末魔を聞けて楽しかった、幸せでした。私を最後まで残してくださってありがとう」という、常軌を逸した答えであった。
だがこの返答により無惨に気に入られ、下弦の鬼で唯一生き残るチャンスを与えられた。

 

そもそも彼は『他人の不幸を見るのが大好き。
幸せな夢を見せた後、悪夢を見せてやるのが好き。
人間の歪んだ顔が大好物で堪らない。
不幸に打ちひしがれて苦しんでもがいているのを眺めていると楽しい』と公言してはばからない、歪んだ性根の持ち主である。

 

こうした気質と、他人はおろか自分の命すらも何とも思わぬ異常な狂気に無惨は鬼としての可能性を見出したのだろう。
かくして無惨の見立てで致死量ぎりぎりの血を強制注入され、その試練を乗り越えた魘夢は鬼殺隊への刺客として出陣する。

 

能力

血鬼術 『夢操作』

催眠術の要領で相手を眠らせ、魘夢の意のままの夢を見せる血鬼術。
主に心理攻撃が主体で作中での戦いでたびたび発動されている、魘夢の基本戦法。
この術に囚われた相手は身体を動かすことができないため、ほぼ彼の勝利が確定する。
しかし一般の鬼殺隊士ならともかく柱のように優れた鬼狩りは、殺気を感知するなどして術を破ることがある。
そのため用心深い彼は自身では決して手を汚そうとせず、後述の刺客を使い先に相手の精神を壊した上で、確実に肉体を殺害するのが常の手口。
夢の世界に囚われたものは、夢の中で「死ぬ」ことで目覚めることができる(作中では、自身の頚を斬る形で炭治郎が復活している)。

 

夢の空間内には「精神の核」(メイン画像の球状の物体)が存在し、これを破壊することで相手の精神は壊れ廃人となる。
しかし自分が直接入り込んだのでは、勘の良い人間には殺気を察知され術を解かれる恐れがあるため、魘夢は辛い現実から逃避したい人々(妻と娘に先立たれた男性、結核を患った青年など)を唆して「幸せな夢を見せる」ことを報酬とし、夢の中の暗殺者として送り込んでいた。
手駒とした人間は、対象と自身の腕に特殊な縄を繋ぎ眠ることで、それを経由して夢の中へ侵入する。

 

強制昏倒催眠の囁き(きょうせいこんとうさいみんのささやき)

口のついた左手から発せられた言葉を聞いた相手を眠らせる術。
音を介して発動させるため、防御手段はほとんどない。
作中では、攻撃手段としてこれを波動拳のように撃ち出している。

 

強制昏倒睡眠・眼(きょうせいこんとうすいみん・まなこ)

魘夢の目と視線を合わせた相手を強制的に眠らせる術。
作中では、自身の眼を列車内の全方位に展開させ、破られても即座に術をかけることで、伊之助と炭治郎に消耗戦を強いた。
さらに、この術で相手を眠らせるのは魘夢の意のままであるため、「夢の脱出方法」を逆手に取って夢の世界に落ちたと相手を錯覚させ、現実の世界で自決させる搦手を挟むこともできる。

 

作中の活躍

無惨の血に順応した彼は、短期間の間に、無限列車にて四十人余りの乗客を食らい、派遣されてきた数名の鬼殺の剣士たちを返り討ちにした。
そうした経緯を受けやってきた炎柱・煉獄杏寿郎、彼と合流した炭治郎一行と対峙する。

 

当初は彼らを血鬼術で幸せな夢の世界に封じ込め、無力化することに成功。
配下の人間たちを夢の世界に送り込む間に、自身は準備を進める。

 

しかし、今回来た鬼殺隊隊士たちは皆常識離れした精神・無意識領域を持っており、夢に入った配下の人間らは各々妨害・懐柔され中々精神の核を壊せずにいた。
そこに仕込みの切符を持たずに乗車した禰豆子が箱から登場。
現実側で炭治郎を起こそうと色々と仕掛け(詳細は下記)、それが術を弱めたことで炭治郎に夢から抜け出す方法を発見されてしまう。

 

夢の中で・・・炭治郎は鬼に襲われる以前の家族と幸せな日々を過ごしていた頃に戻っていたが、徐々に違和感を感じ始める。そして水を汲む為に川を覗くと鬼殺隊の隊服を着た自分を見付け、これが夢の中の世界だと気付く。
その頃魘夢の術にかからなかった禰豆子が現実世界で眠っている炭治郎を起こそうと頭突きをしたが、炭治郎の石頭で逆に怪我をしてしまい怒って炭治郎に自身の血鬼術で火をつけてしまった。
それにより夢の中の炭治郎にも火がつき、格好が日輪刀を帯刀した隊服姿に変わったことで完全に夢の中だと理解する。
そして突如目の前に鬼にされる前の禰豆子が現れ、暖かく差す日の下を歩く姿を目にする。

 

「ああ・・・・・・ここに居たいなあずっと 振り返って戻りたいなあ」
「本当なら ずっとこうして暮らせていたはずなんだ ここで」
「本当なら みんな今も元気で 禰豆子も日の光の中で 青空の下で」
「本当なら・・・本当なら!!」

 

そう思いながら涙を流し悔しさを噛みしめながら、家族はもういない、戻ることはできないと走り出す炭治郎を、弟・六太が「お兄ちゃん 置いて行かないで!!」と追いかけてくるが、後ろを振り返らず走り続けた炭治郎を家族は永遠の別れを惜しむかのように見送った。
夢から覚めるため夢の出口を探す炭治郎の背後に、突然父・炭十郎が現れ
「炭治郎 刀を持て 斬るべき者はもう在る」と言い残し消えていった。
炭治郎は助言を信じ、自らの首を刀で切り裂き夢から目覚めた。
そして刺客達を退いた炭治郎は遂に車上で魘夢と対峙。
魘夢は血鬼術で再び炭治郎を夢に閉じ込めようとするが、既に脱出の方法を知った炭治郎は眠らされる度に即座に自害することで夢の世界から脱出、魘夢の術を悉く無力化していく。業を煮やした魘夢はやむなく「自分だけ生き残った炭治郎に罵詈雑言を浴びせる家族」の悪夢を見せて心理攻撃を図ろうとするも、しかしそれが逆効果となり、逆鱗に触れた炭治郎に敗北する。

 

 

だがそれでも尚余裕の表情を崩さない魘夢は、事前に自身を列車そのものと融合し、自身の頚の位置を分からなくした上で乗客すべてが人質であり、食料であると炭治郎を揺さぶり、彼を動揺させ乗客を喰らおうとする。
しかし、現実の世界へ復帰した煉獄によって即応された挙句、対策を示唆された結果、伊之助と炭治郎によって自身の頚の位置を見抜かれ、血鬼術の抵抗もむなしく最終的に頚を斬られ、今度こそ完全に敗北することとなった。

 

列車の残骸から肉塊と成り果てて打ち出された魘夢は肉体が崩れゆく中で「無惨から血を分け与えられた上にこれだけの時間と手間をかけたにも関わらず勝てなかったこと」、「もはや獲物は自分の腹の中同然だったのに1人も人間を喰えなかったこと」、そして「自分の力をもってしても上弦の座に届かなかったこと」を嘆き(余談だがこの時上弦の参と上弦の陸と思わしきシルエットが回想されている)、最期は自身を倒した炭治郎達への恨み節と共に絶望の中で消滅した。

 

「ああああ やり直したいやり直したい」
「何という惨めな悪夢…だ……」

 

散々人間に悪夢を見せて絶望させてその顔を観察し続けていたが、最期には目の前の認めたくない現実に「これは何て悪夢だ」と絶望しながら朽ち果てていくという皮肉な末路であった。

 

過去

劇場版入場特典の「大正コソコソ噂話」にて明かされた。
かつては夢と現実の区別がつかず周囲を困惑させる子供であり、成人後は医者でもないのに、余命短い人間を相手に催眠療法で「健康になった」とぬか喜びさせた後に真実を暴露するという、鬼となる前もやっていることは変わらず最低な人間だったとの事である。
前任者といい下弦の壱はこんな奴ばかりである。

 

 

 


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